スタートアップが陥りやすい法務リスクTOP3:成長を止める落とし穴
「プロダクトを作るのに忙しくて、契約書のことはよくわからない」 「弁護士に頼むお金がないから、ネットのひな形を適当に使っている」
多くのスタートアップ経営者が抱える本音でしょう。しかし、創業期の「小さな法務のミス」が、後のIPO(上場)審査やM&Aの局面で発覚し、会社の価値を大きく毀損したり、最悪の場合は倒産に至るケースもあります。 これを「法務負債」と呼びます。技術的負債と同様、後で返すのは大変です。
今回は、特にスタートアップが陥りやすく、かつダメージが大きい「3大リスク」について解説します。
1. 知的財産権(IP)の未確保:名前が使えなくなる恐怖
サービス名やロゴ、独自の技術はスタートアップの命です。
商標権のトラブル
一生懸命ブランディングして有名になったサービス名が、実は他社にすでに商標登録されていた…というケースです。 この場合、サービス名の変更を余儀なくされるだけでなく、過去の使用料として多額の損害賠償を請求される可能性があります。 対策: サービス名を決める段階で、必ず「商標調査(J-PlatPatなどで検索)」を行い、ドメイン取得と同時に商標出願を行うこと。数万円のコストを惜しんではいけません。
職務発明の帰属
創業メンバーや従業員が開発したプログラムの著作権や特許権は、自動的に会社のものになるわけではありません。 契約書や就業規則で「業務に関連して作成した知的財産権は会社に帰属する」と定めておかないと、そのエンジニアが退職した際に「コードの権利は自分にある」と主張され、システムが使えなくなるリスクがあります。
2. 創業株主間契約の不備:仲間割れで会社が詰む
共同創業者同士のトラブルは、スタートアップの死因の上位です。 例えば、株式を33%ずつ持ち合った3人の創業者のうち、1人が「やる気がなくなった」と言って半年で辞めたとします。 何の取り決めもしていなければ、その辞めた人は33%の株を持ったままです。
- デッドロック: 残ったメンバーだけでは株主総会の特別決議(2/3以上)を通せず、重要な意思決定ができなくなる。
- 資本政策の破綻: 働いていない人が大量の株を持っている会社に、投資家は出資したがりません。
対策: 「創業株主間契約」を結びましょう。 「退職時には、創業者が保有する株式を、会社または残った創業者が簿価(安い価格)で買い取ることができる」というベスティング条項(Reverse Vesting)を入れておくことが必須です。これはVCから出資を受ける際の条件になることも多いです。
3. 利用規約・プライバシーポリシーのコピペ:中身がスカスカ
「似たようなサービスの規約をコピペして、社名だけ変えればいいや」 これは絶対にNGです。
ビジネスモデルとの不整合
他社の規約は、他社のビジネスモデルやリスク許容度に合わせて作られています。 例えば、CtoCのマッチングサービスなのに、BtoCのECサイトの規約をコピペしていたため、「ユーザー間のトラブルに運営が全責任を負う」ような不利な条項になっていた…という笑えない事例もあります。
個人情報保護法・特定商取引法への違反
法律は頻繁に改正されます。古い規約をコピペすると、現在の法令に対応しておらず、違法状態になる可能性があります。特にプライバシーポリシーは、取得する情報の項目や利用目的が自社の実態と合っていないと、虚偽の公表となり信用問題に発展します。
まとめ:最低限の「守り」を固めよう
スタートアップにおいて、攻め(プロダクト開発・営業)が最優先なのは間違いありません。 しかし、最低限の守りを固めておかないと、攻めの成果が一瞬で無になってしまいます。
- 商標は取る。
- 株主間契約を結ぶ。
- 規約は自社用に作る。
まずはこの3点だけでも意識してください。LegalBuddyのようなリーガルテックを活用すれば、低コストでプロレベルのチェックを受けることも可能です。賢くリスクを回避し、事業成長に集中しましょう。
